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副業で得た圧倒的な経験値が、キャリアを拓く礎に。急成長スタートアップCDOの“人生を豊かにする副業”

副業で得た圧倒的な経験値が、キャリアを拓く礎に。急成長スタートアップCDOの“人生を豊かにする副業”

急成長するスタートアップ企業、株式会社Sales MarkerのCDO(Chief Design Officer)として活躍する岡 直哉さんは、デザインのスキルを副業で磨き上げ、キャリアを自ら切り拓くご経験をされました。現在はスキルアップとは異なる目的で、地域創生の副業に取り組む岡さんの具体的なエピソードを通じて、副業がキャリアにもたらす可能性ついて探ります。

岡 直哉

プロ人材

岡 直哉 さん

株式会社Sales Marker CDO(Chief Design Officer)。多摩美術大学情報デザイン学科卒業。日本最大級のポータルサイトを運営する情報・通信会社に入社。Webデザインを担当した後、コーポレートブランディングの部署へ異動。CM・広告制作、プランニングを数多く手がけ、CEO直下のクリエイティブセンターの設立とともにセンター長に就任。2024年1月より現職。D&AD賞、毎日広告デザイン賞など受賞歴多数。

本業も副業も、やりたいことがあるなら手を挙げてチャレンジ

まず本業について、キャリアのスタートから担当してきた業務を教えてください。

美術大学を卒業し、新卒で入社した会社では、Webデザインを中心に担当していました。セールページやプロモーションページの制作などに携わる中で、入社3年目にコーポレートブランディングの部署や広告代理店と連携しテレビCMに関わる機会を得ました。そこで、会社の経営戦略を基にCMのコンセプト設計がなされ、各々のクリエイティブ業務に落とし込まれる流れに気付きました。

デザインの制作業務以上に、デザインコンセプトを作る方が面白そうだと感じ、上流で戦略を練る仕事にチャレンジしたいと、コーポレートブランディングの部署へ異動を願い出ました。若手が自ら手を挙げて挑戦する文化のある会社でしたし、やりたいことに突き進んでいきたいという気持ちを強く持っていました。

コーポレートブランディングの部署では、デザイナーもプランニングの仕事にチャレンジできたので面白かったです。社内のアイデアコンペなどにも積極的に参加しました。私の案が採用されることが多かったこともあり、新しくクリエイティブの部署が設立されると、そのトップを任されるようになりました。

副業を始められたのはいつ頃ですか?

入社3~4年目、コーポーレートブランディングの部署に異動するくらいのタイミングです。当時から多くの人が副業をしていたと思います。私自身は、大学時代に登録していたアウトソーシング会社を通して、ロゴ制作などライトにできる仕事から始めました。

副業を始めようと思われた理由は?

自分のデザインスキルが、社外でどの程度通用するのかを知りたかったからです。

会社のインハウスデザイナーでしたから、仕事の評価は狭いコミュニティ内でなされていました。毎回同じ担当者とやり取りするので、評価されるデザインの傾向や修正されるポイントが分かってしまい、デザインにNGが出ることが少なくなります。そのような環境では、自分のデザインスキルのレベルを正確に認識しにくかったため、社外の評価を得られる副業を始めようと思いました

新卒の頃から、「自分が正しいと思うこと」「やって成功するだろうと思うこと」に対しては突き進んでいったという岡さん。

客観的な評価を受け、仕事の領域を広げる副業

副業の仕事は、どのような軸で選択していましたか?

他の制作会社や代理店などのデザイナーと比較し、自分のデザインレベルを測りたかったので、イラスト作成、バナー作成、ロゴ作成など、さまざまなコンペへの応募が中心でした。コンペで制作したデザインが選ばれると報酬が出ますが、選ばれなかったら対価はありません。このように、はっきりと評価が出るコンペは、デザインスキル向上に適していました。

選ばれなければ報酬のないコンペに不安はありませんでしたか?

デザインスキルの確認とスキルアップが目的の副業だったため、不安はありませんでした。もちろん、最初はうまくいきませんでしたが、経験を積むうちにわかってきたこともありました。

コンペでなぜ選ばれないのか。それは、デザインの品質だけでなく、提案の仕方が重要だからです。クライアントに刺さる提案の仕方があると途中で気付いてからは、勝率が上がっていきました。コンペに勝てると、自分のスキルが証明されたようで単純に嬉しかったので、全国規模のコンペに参加し続けました。

副業にかなりの時間とエネルギーを使いましたか?

確かに、最初は土曜日の数時間くらいの活動だったのが、継続していくうちに週末は多くの時間を副業に充てるようになっていきました。とはいえ、デザインするのは好きだったので苦ではありませんでした。何より、普段関わらない飲食業やアーティストさんとの仕事など、今までと違う領域で活動できるのは楽しかったですし、仕事の幅が広がる感覚がありました。

本業と同種の副業をすることでスキルの循環が生まれると岡さんは強調する。

本業と副業、2つのステージでスキルを磨き、循環させる

副業が、本業やキャリアに好影響を与えた点として、どのようなことが挙げられますか?

まず、圧倒的に仕事の経験値が増えます。私は、本業で年間10案件のデザイン業務に携わっていた時期に、副業では年間300案件程活動していました。本業の30倍の量をこなしたことで、単純に30倍成長したと思えるくらい、副業で得た経験値は大きな財産になっています。

私の場合、本業も副業もクリエイティブという同じ領域ですから、私のスキルアップがそのまま双方に好影響を生みます。本業でキャリアアップするにつれ、プレゼンテーションをする場が増え、そのスキルが高まれば、副業のコンペにも活きるようになります。副業で得たデザインスキルが、本業に還元され、本業で得たスキルが副業に還元されてと、循環している形です。

2024年1月に、大企業からCDOというポジションでスタートアップへ転職されました。CDOはデザイン部門の最高責任者を意味しますが、この決断に副業経験はつながっていますか?

前職の大企業では、10を100にしたり、100を磨き上げたりする仕事が多かった印象です。次のステップに進むなら、もう少し小さな組織でゼロイチを生み出す経験をしたいと考えていました。それは、副業でスタートアップ企業の支援に何度も取り組み、ゼロイチの面白さを体験していたからだと思います。

しかし、規模の小さな企業は、ブランディングに注力する余裕がないことが大半です。幸い現在の会社は、急激に成長している最中で、ブランディングを重要戦略の一つと捉えています。そのため、声を掛けられた時に、挑戦してみたいとすぐに決断できました。

「好き」と「得意」を活かせる場所で、やりたいことを突き詰める

現在の仕事内容と、本業、副業のバランスを教えてください。

現職の会社には、300人程社員が在籍しており、デザイン組織は20名くらいです。プロダクトの担当チームと、コミュ二ケーションデザインのチーム、広報チーム、ブランディング戦略チームと、四つに分かれています。その部署を統括し、経営陣の一人として仕事をしています。土日も本業があるので、今の会社に入ってから副業はできていません。

ただし、以前から関心を持ち取り組んでいる地域創生の活動だけは、無理のないペースで続けています。

HiPro Directでも、八丈島の課題解決型ワークステイ「まるごと八丈島を考えるプロジェクト」に参加され、支援がスタートしていますね。

八丈島のリブランディングという、大変興味をそそられるプロジェクトでした。それまでは、特定の地域で仕事を受けていたので、エリアを広げられるチャンスだと感じ応募しました。

八丈島を実際に訪れ、課題解決方法を模索。その後酒造メーカーとマッチングして支援が走り出しました。どのような提案をされましたか?

100周年を迎える酒造メーカーのリブランディングの支援でした。ボトルデザインの作成を想定したご依頼でしたが、私なりの企画をからめて支援内容を提案しました。

具体的には、八丈島の子供達100人に100枚の絵を描いてもらい、ボトルデザインにする企画で、子どもたちが成人してお酒が飲めるようになる未来を見据え、話題づくりをしていこうというものです。小学校を始めとして、島全体を巻き込むプロジェクトになりますが、想定以上の早さで順調に進んでいます。

地域創生の仕事をしていていつも驚くのは、こうしたスピード感です。今回も担当者の親戚である校長先生に直接連絡していただきました。地縁や血縁によるネットワークは、地域ならではの強みと言えるでしょう。

100通りの子供たちの絵をボトルデザインにする企画が進行中。

地域創生の戦略を考える活動は、私たちスタートアップ企業が経営戦略を立てる仕事と似ています。5年先、10年先を見通してブランディングしていく。そういった意味で、本業の経験がここでも活きますし、副業でのクリエイティビティが、本業へインスピレーションを与えることもあると考えています。

最後に、副業をこれから挑戦したい方に向けて、メッセージやアドバイスをお願いします。

長く続けられるように、ぜひ自分が好きなことを副業にしてほしいと思います。私自身、地域課題を解決する仕事がとにかく好きなので、副業というより趣味に近い存在になっているかもしれません。私にとっての副業は、今、スキルアップから、自分の人生経験を高めていくものにシフトしています。

※ 所属・肩書および仕事内容は、取材当時のものです。

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