目指すは「未来社会の活性化」。九州・沖縄圏の大学発スタートアップの創出、研究シーズの事業化に携わる醍醐味とは

掲載日:2024/08/08

九州大学が主幹機関となって運営する、九州・沖縄圏が一体となった大学発スタートアップ創出プラットフォーム「PARKS(Platform for All Regions of Kyushu & Okinawa for Startup-ecosystem)」では、現在九州・沖縄圏の大学の研究シーズを活用して事業化に取り組むプロ人材を募集しています。

この度のプロ人材募集について、九州大学の100%子会社である九大OIP株式会社より、パーソルグループが請け負うことになりました。

本記事では、九州大学の産学官連携を担う九大OIP株式会社にお伺いし、九州大学の教授で九大OIP株式会社の執行役員・古橋 寛史さんと、九大OIP株式会社のコーディネーター高増 健一さんに、「PARKS」の取り組みやプロジェクトにかける想 い、プロ人材として参画する魅力などをお話いただきました。

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九大OIP株式会社

古橋 寛史 氏

九大OIP株式会社

古橋 寛史 氏

九大OIP株式会社 執行役員。理学博士。国立遺伝学研究所、米・エモリー大学での研究活動を経て、2014年まで東北大学薬学研究科の教員としてライフサイエンス領域における教育と研究に従事。その後、 株式会社TLO京都で、大学知財の権利強化、 ライセンス活動やスタートアップ支援を推進。2023年からは九州大学の教授、そして九大OIP株式会社の執行役員兼サイエンスドリブンチームディレクターとして従事する。

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九大OIP株式会社

高増 健一 氏

九大OIP株式会社

高増 健一 氏

九大OIP株式会社 サイエンスドリブンチーム コーディネーター。福岡市役所から出向。市役所入庁後は、市営住宅の建替事業や生活保護業務、青果市場の統合移転整備事業等を担当した後、スタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next」の立ち上げから運営を4年間実施。福岡市産学連携交流センター(FiaS)の担当として大学発スタートアップ支援を経て、2022年度より九州大学オープンイノベーションプラットフォームに出向し、スタートアップ創出支援を行っている。

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「PARKS」は、福岡市、北九州市をモデル都市としてスタートアップ・エコシステムの創出を進めています。

九州から世界で活躍できるスタートアップの創出を目指す

まず、古橋さんにご質問です。今回人材募集をされる「PARKS」のプロジェクトの概要を教えてください。

古橋氏:「PARKS」は国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)による「大学・エコシステム推進型スタートアップ・エコシステム形成支援」の採択を受けスタートしたプロジェクトで、九州・沖縄圏一体でアジアとつながるスタートアップ・エコシステムの創出を目指す取り組みです。現在、主幹機関の九州大学、九州工業大学をはじめ、全19機関が参加しています。プロジェクト内では、「起業活動支援プログラムの運営」「アントレプレナーシップ人材育成プログラムの運営・開発」「起業環境の整備」「拠点都市のエコシステムの形成・発展」の4つを軸に取り組んでいます。

このプロジェクト最大の特徴は九州・沖縄圏、そしてアジアと連携していること。九州には、現在大きな盛り上がりを見せている半導体のほか、バイオテクノロジーや宇宙産業などの優れた研究シーズが昔から豊富にありますが、どの大学もそれらを上手く活用しきれない、社会課題の解決に繋げられないという課題がありました。

そこで、九州全体が協力できるプラットフォームを作ることで、効率的かつ九州の強みを生かしたスタートアップ創出の基盤を作りたいと思ったのです。昔から九州の大学と強い結び付きがあるアジアと連携することで、世界で活躍できるスタートアップの創出を目指しています。

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以前、東北や関西ではたらいていたという古橋さん。「九州には、他の地域に比べて相互扶助の姿勢をより強く感じる」と話します。

自分次第で「ダイヤの原石」を社会課題の解決に繋げられる

そんな「PARKS」でプロ人材を募集されていますが、その背景と同プロジェクトに携わる魅力を教えてください。

古橋氏:日本の大学発スタートアップ創出支援の現場では現在、「経営人材不足」という課題を抱えています。これは大学発スタートアップが長年直面している課題でもあるのですが、大学発スタートアップは研究者や大学職員、学生が経営を担う場合があります。彼らは高い研究力や技術力は持っていますが、経営の経験や事業化を成功させるためのノウハウがないことも多く、なかなか事業化に繋げられないケースや、事業を上手く推進させられないことが多々あります。

そこで、戦略的思考や経営的な視点を持ったプロ人材の方々の力をお借りしたいと思っています。研究と経営を専門とする双方の人材が交わり協力することで、これまでにない視点やアイデアの創出を期待しています。

大学の研究成果は実用化までに時間がかかることが多いため、すぐに商品化やサービス化ができなかったり、一見すると実用性が分かりづらかったりする研究も少なくありません。ただ我々からすると“ダイヤの原石”ばかり。そういった原石を自身が持つ創造力やマーケティング力などを使って磨き上げ、事業化させ、さらには社会課題の解決に携わることができるのが、当プロジェクト最大の魅力や醍醐味だと思います。

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福岡市から出向中の高増さん。言葉の節々から「PARKS」にかける熱い思いが感じられました。

「PARKS」をきっかけに誕生した企業で医療界に革命を

実際にいくつか成功事例も出ているようですね。

高増氏:そうですね。その一つに挙げられるのが、2023年10月に設立された長崎大学発ベンチャー「株式会社SCMバイオメディカ」です。長崎大学の先端創薬イノベーションセンターの田中義正教授とSK弁理士法人の奥野彰彦弁理士が共同創業した会社で、革新的ながん免疫療法の実用化を目指しています。

「PARKS」では、田中教授が持つ技術シーズを社会実装に繋げるためのサポートとして、プレCXO人材プールを活用した経営のプロとのマッチングや、アクセラレーションプログラムの提供を行い、事業化に必要な知識やネットワークの構築を支援しました。プログラム期間中は起業まで至りませんでしたが、終了後にCxO候補の一人だった奥野弁理士との起業が実現しました。現在は無事に資金調達も完了し、順調に事業が進み始めたようです。

この事例を通じて「PARKS」の意義や、経営人材との協働の重要性などを改めて実感しました。また大学や教授側にとっても、起業家としての視点や視野を広げるきっかけになったのではと思っています。

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これから関わるプロ人材に対して、「ライトに参加してほしい」と何度も呼びかけていた古橋さんと高増さん。

目指すは「未来社会の活性化」。そして持続可能なプラットフォームに

「PARKS」では令和8年度末までに155社の起業や、年間1万2千人へのアントレプレナーシップの教育機会の提供を目指しているとお聞きしました。

高増氏:はい。ただ「PARKS」が本当に実現させたいのは、それらの目標の先にある「未来社会の活性化」です。そのためにまず目指すのは「九州の活性化」。起業家精神を持った教員や学生を増やし、大学発スタートアップを数多く創出することで、九州の経済循環に寄与できたらと思っています。

同時に、東京一極集中や地域経済の衰退といった課題を解決する糸口にもなれたら嬉しいですね。そして最終的には、国内にとどまらずグローバルに活躍できるスタートアップを創出して、日本の存在感を高め、世界経済の発展に寄与していきたいです。

古橋氏:今回のように国の助成金を受けてスタートした事業は、持続化させるのが難しいという課題があります。しかし今回のプロジェクトをきっかけに、九州の多くの大学が「九州から世界に羽ばたくスタートアップを」という思いで団結し、その基盤作りに取り組んでいます。この機会を大切に、熱意や勢いを維持しながら、持続可能なプラットフォームにしていきたいです。

最後にこれからプロ人材として関わる方や興味を持たれている方へメッセージをお願いします。

高増氏:これまで研究者と関わったことのない人たちが多いかもしれませんが、だからこそ得られる気付きやここでしか経験できないことがたくさんあると思います。九州という地域から共に、日本を変えていきましょう。

古橋氏:一見、経営や事業化に携わることはリスクも高く、チャレンジングに思えますが、最初からフルコミットをお願いしたいわけではありません。少しでも「社会課題の解決に携わりたい」という思いを持っている方は、ぜひ好奇心と共にライトな気持ちで「PARKS」に参加してほしいです。同時に、一体感のある地域の雰囲気や人柄など、九州の魅力も感じてほしいですね。

大学発スタートアップ創出プラットフォーム「PARKS」では、研究シーズの事業化に興味のある経営人材を募集しています。沢山の魅力が詰まった九州を舞台に、自身のスキルを存分に発揮して社会の課題解決に取り組みませんか?

※ 所属・肩書および仕事内容は、取材当時のものです。

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