筑波大学のスタートアップ創出。研究者とEIR人材がタッグを組むことで、最新技術の社会実装が加速する

掲載日:2024/09/02

2014年 国際産学連携本部を設立し、スタートアップ創出に力を入れる筑波大学は、最新技術研究を効率的に社会実装につなげるために、HiPro Direct(ハイプロダイレクト)にてEIR人材(客員起業家)を募集します。

筑波大学が推進する産学連携の理念や取り組みについては筑波大学副学長(産学連携担当)・国際産学連携本部長 中内 靖 氏に、EIR人材の募集の狙いや求める人物像などについて、国際産学連携本部の野村 豪 氏、安 敬 氏にもお話を伺いました。

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筑波大学

副学長(産学連携担当)・国際産学連携本部長 中内 靖 氏

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副学長(産学連携担当)・国際産学連携本部長 中内 靖 氏

慶應義塾大学大学院計算機科学専攻博士課程修了。防衛大学を経て、筑波大学大学院システム情報工学系教授。2024年4月より筑波大学副学長(産学連携担当)・国際産学連携本部長。専門はヒューマンインタフェース、ロボティクス、空間知能化技術。見守り・監視システムやIoTデバイス、環境モニタリングシステム「スマートワトソン君」、水中ドローンなどを手掛ける。株式会社空間知能化研究所をCEOとして起業し、社名変更した株式会社FullDepthでは取締役会長を務める。

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国際産学連携本部 助教 野村 豪 氏

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国際産学連携本部 助教 野村 豪 氏

筑波大学大学院数理物質科学研究科修了。株式会社SUBARUを経て、筑波大学国際産学連携本部技術移転マネージャー。2023年4月より筑波大学国際産学連携本部助教。ベンチャー起業相談室のリーダーとして、100名以上の相談対応を行い、およそ30社を起業に導く。学生に対する授業として「筑波クリエイティブ・キャンプ・ベーシック-アントレプレナーシップ入門講座」を担当。つくば地区の国立開発研究法人等の研究者も対象に含めた「つくばアントレプレナー育成プログラム BizDev講座」の講師を務める。

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国際産学連携本部 産官学共創プロデューサー 安 敬 氏

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国際産学連携本部 産官学共創プロデューサー 安 敬 氏

大学院修了後、株式会社本田技術研究所に入社し四輪部門にて研究開発に従事。ステアリングシステムの設計担当として車両企画・先行開発段階から量産車の開発・立ち上げを行った後、経営企画統括部に異動し新規事業開発プログラムの企画・運営、社内技術シーズを活用した事業開発を行う。2022年からDeepTechスタートアップSUN METALON inc.にて金属リサイクル装置のプロジェクトマネージャーとしてPoC、装置開発、初号機販売をリード。2024年5月から筑波大学国際産学連携本部産学官共創プロデューサーとしてスタートアップ創出に務める。

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まず副学長(産学連携担当)の中内さんに、筑波大学における産学連携の取り組みについて伺いました。

一貫した体制でスタートアップ創出を支援。地域全体のベンチャーエコシステム構築のハブになる

筑波大学の国際産学連携本部が行っている取り組みのポイントを教えてください。

中内氏:産学連携において大切なことは、大学全体の知財や特許等をしっかり管理し、企業との共同研究やスタートアップ創出を通して研究の成果を世に出していくことです。国際産学連携本部では、各研究者が持っている技術を適正に評価・権利化しながら、大学が持つシーズを共同研究やスタートアップ創出につなげています。一方で、企業側が抱える解決したいニーズを聞き出し、それに適した学内の研究者により共同研究を組成していくという、2つの方向からアプローチしています。

学生や研究者の起業、技術の社会実装に向けての具体的な支援体制について教えてください。

中内氏:学内公募型の「社会実装支援事業」、学生や学内外の研究者等に対する「アントレプレナーシップ教育」、スタートアップ創出を促進する「つばさ事業」により起業に向けて一気通貫で支援する体制を整えています。

「社会実装支援事業」では、つくば地域にある国立研究開発法人等との共同研究に対して資金提供を行う「つくば産学連携強化プロジェクト」や研究場所の貸与を行う「事業化促進プロジェクト」などを実施しています。

「アントレプレナーシップ教育」では、学生向け、研究者向けにさまざまな講座を開設し、起業家精神の醸成からリテラシー教育など、実践的教育を行っています。実際に起業しようというフェーズでは、「ベンチャー起業相談室」による相談支援を行い、また、プロフェッショナルメンターによるハンズオン・メンタリングとGAPファンド支援を行う「つばさ事業」などにより事業化に向けた支援を行っています。

このほか、「筑波大学発ベンチャーシンポジウム」などを開催し、筑波大学が創出するベンチャー企業を紹介することで、資金調達が必要なスタートアップとベンチャーキャピタルとのマッチングをはかるなど、さまざまな形で大学発スタートアップを支援しています。

実際に筑波大学発のスタートアップは年々増えているのでしょうか?

中内氏:経済産業省の「令和5年度大学発ベンチャー実態等調査」において、筑波大学発スタートアップは236社、大学別では全国5位の創業数を誇っております。筑波大学は約50年前に新構想大学として筑波研究学園都市に設立された経緯もあり、自分たちで世の中を変えるというベンチャーマインドは全体的に高いものと思っています。

そうしたベンチャーマインドの高さは、どこからくるのでしょう。

中内氏:筑波大学からは、すでに起業して活躍されている方がたくさんいます。「同僚がCEOになってこんなに大きな会社を動かしている」と思うと、研究者としても刺激を受けることになるでしょう。実は私自身も、こうした環境に刺激され、ロボット工学を応用した水中ドローンの会社を設立しました。研究成果を世の中の役に立つように実装するためには、自らが起業する必要があると思ったのです。

以上は研究者の話ですが、学生が自ら起業することもあります。学生の間では「起業するなら筑波大学で学べ」と言われていると聞きます。学生が起業した会社が順調に成長しているケースがいくつもあり、学生の起業へのモチベーションも高い大学だと思います。

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「筑波大学は教員、学生問わず起業を目指す風土が育っている」と話す副学長の中内さん。

大学内にとどまらずベンチャー創出エコシステムを広げていきたい

これまでの大学発スタートアップ創出の実績について教えてください。

中内氏:医療系、理工系の技術を扱うスタートアップが多いですね。医療系では従来の創薬や医療機器に加えてAIを活用したもの、たとえばAIによって医師の診断をサポートするシステムの開発などが増えてきています。工学はロボティクス系が多いですね。

また、本学には体育、芸術の学部があることも特徴です。体育系の知見は、QOL向上のための未病や予防の研究、アスリート向けの用具や用品開発に活かされています。芸術系は、さまざまな機器や製品のプロダクトデザインの分野で実績があります。

筑波大学が産学連携によって目指していること、ビジョンを教えてください。

中内氏:目指しているのはベンシャーエコシステムの構築です。資金と人材がうまく循環することで、スタートアップが生まれる仕組みを回していく、それが私たちの考えるベンチャーエコシステムです。

さらには、大学内にとどまらず、つくば地域の研究施設とも連携してこのベンチャー創出エコシステムを広げていきたいです。今回のEIR人材の募集も、そんな活動の一環と考えています。

ベンチャーエコシステムを構築する意義を教えてください。

中内氏:筑波大学は国立大学ということもあり、人的、知的資産を社会に還元することが、ますます問われるようになってきていると感じています。筑波研究学園都市という国家プロジェクトのもと、今やつくば市は研究従事者を約2万人擁する国内最大※のサイエンスシティです。地域全体、県全体でスタートアップ創出の機運が高まっています。筑波大学は、先端研究ならびに人材育成を核として、地域全体のベンチャーエコシステムを構築するハブになれればと思っています。

※つくば市ホームページ参照

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続いて、野村さんと安さんに、プロ人材と共にスタートアップ創出を目指す意義について伺いました。

「研究で世の中を変えていく」というパッションを持った人材が必要

プロ人材と共に起業することの意味合いについて教えてください。

野村氏:最近私たちが支援したケースで、民間企業から大学に移られた研究員の方が教授とタッグを組んで起業したという例があります。このケースを分析すると、民間企業にいた方、パッションのある方に参画いただき、タッグを組んで事業化していくことが成功の秘訣なのだとわかったのです。ですから、最近では起業しようとする先生方に、学生や民間企業ではたらく卒業生とともに事業化することを提案しています。

起業を成功させる可能性を高めるには、研究者以外の力が必要だと考え、EIR人材の募集を進めています。

最近は、大学での研究と社会実装との距離が短くなっていると感じます。

野村氏:そうですね、社会も新しい産業を求めていると思います。かといって、新規事業を立ち上げたいといっても、研究から始めて新しいシーズをつくるのは現実的に難しいでしょう。そういう意味でも、大学発のスタートアップに期待が集まっています。

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大学発スタートアップ創出には、EIR人材が必要だと話す野村さん

プロ人材に必要なのは、社会を変えられるかもしれないというワクワク感

どんな人材が大学発スタートアップ創出に向いていると思いますか?

安氏:私は以前、スタートアップではたらいていましたが、特に創業初期は自分自身が会社に与える影響がとても大きく、難しい意思決定が必要になることも多いフェーズでした。そういう意味で、自分で切り開いていく、自分で決断して行動できる方は向いていますし、求められていると思います。

自分の経験からすると、創業初期は何から手を付けるべきかがわからないほど、やるべきことがたくさんあります。そのため受け身にならず、落ちているボールを自分から拾いにいけるようなマインドを持った人が適していると思います。

研究シーズの事業化において、EIR人材にどのようなことを求めていらっしゃいますか?

野村氏:スタートアップを起こしてビジネスの世界に飛び込む意思のある先生であっても、その多くは、あくまで研究者としての立場に軸足があります。そのため、自身のスタートアップには、大学から移転された研究成果の価値を最大化して社会実装する役割を期待しています。EIR人材には、先生の研究成果に対するビジョンやポリシーに賛同して経営に参画いただけると理想的ですね。

安氏:技術にワクワクすることがすごく大事だと思います。私自身も、技術に惚れ込んで当時は正社員が10人以下の創業初期のスタートアップに参画しました。その技術がもしかしたら社会を変えるかもしれない、というワクワク感があるからこそ、大変な創業期を乗り越えて次のステップに進めるのだと思います。

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大学発スタートアップ創出に必要なのは、研究技術にワクワクしていることだと話す安さん

ゲームチェンジするような最先端の技術を事業化し、世の中を変えていきたい

最後に、筑波大学の案件に応募する方へのメッセージをお願いします。

野村氏:大学でやっていることは、世の中をゲームチェンジするような最先端の技術です。世の中を変えるフロントランナーとして、一緒に汗をかきながら大学発スタートアップ創出を目指しましょう。

安氏:スタートアップの使命は、今まさに世の中にある課題を解決することだと思います。そのためには、やはりテクノロジーが重要です。私たちも支援人材として一緒に伴走するので、先生と共に技術を大きく育て、社会の課題解決に繋げていってほしいと思っています。

筑波大学では、研究シーズの事業化、大学発スタートアップ創出を研究者と共に目指すEIR人材を募集しています。自身の経験やスキルを活かし、社会の課題解決に取り組む意欲のある方はぜひご応募ください。

※ 所属・肩書および仕事内容は、取材当時のものです。

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